猫の話2

ペットボトル麦茶の段ボール箱に入れられ、子猫は祖父母の家の離れから私の家に運ばれた。母は車を運転しながら、本当にきちんと世話ができるのかとしきりにこぼしていたが、私は後部座席で段ボール箱の隙間から夢中になって子猫の姿を覗き、名前を考えていた。

自宅に着いてまず、私は子猫を風呂場に連れて行き、温かいシャワーを全身にかけた。子猫の身体からは真っ黒な水が流れ、ところどころでノミが跳ねていた。猫用シャンプーで隅々まで洗い、バスタオルで拭いてからノミ取り薬を身体の数カ所に垂らした。ドライヤーで乾かすと、ふわふわの毛が膨らみ、石鹸の匂いが部屋いっぱいに広がった。

子猫は、エメラルドグリーンの大きな目を持つオスの茶トラだった。

 

麦茶の段ボール箱に入れて運んだことから「ムギ」という名前が付けられた子猫は、すぐに人間を好きになった。懐っこく甘えたがりで、手を焼かせるようないたずらはしなかった。人間に対して怒って噛んだり引っ掻いたりということもなかった。とても優しい猫だった。

茹でたキャベツか菜の花と鰹節を和えたものが大好物だった。鮪も食べた。ハムなどの肉には興味がないようだった。

よくしゃべり、いつも人間の側にいた。私もまたいつも話しかけ、膝の上にのせて身体を撫でた。制服のスカートにたくさんついた抜け毛をいとおしく思った。

ムギはとても大きく成長した。エメラルドグリーンの目は優しく強く美しかった。